瀬戸内海を渉る(十八次 瀬戸内カヤック横断隊 備忘録)その6

六日目 渋川海岸


前夜の風雨も収まった夜明け前、4時起きにも慣れてきた。湿ったウェアにモゾモゾと着替えていると、外が何やら騒がしい。「カヤックが悪戯されてるぞ~自分のカヤックを確認したほうがいいぞ!!」と。
着替え終えてテントから出ると30mくらい離れたところでヘッドランプの明かりが幾つか右往左往している。
僕のカヤックは一列に並べた16艇の一番端っこに置いてある。その反対側の端のカヤックで何かあったらしい。
行ってみると、綺麗に並べてあったカヤックが端から3艇ほどあらぬ方向をむいていた。
マツオカさんのカヤックは、デッキバックがビリビリに破かれ、カレーかラーメンかのビニールのようなものが散らかり、何やら食い物以外もいろんなものが散乱していた。ダイスケさんが「イノシシです。夜中にゴソゴソしとったから声出して追い払いました。」あぁ、たしかに公衆トイレにも「イノシシ出没注意!!」のポスターが貼ってあった。しかし、開いたハッチの中にリンゴと芋がネットに入りそのまま置いてあるね。町に降りてくるイノシシも人間同様ジャンクフードが好きらしい。(^_^;)
マツオカさん、ハルさん、クニーさんのカヤックが被害を受けていた。けっこう派手な惨劇に見えるが、お疲れのせいか、気が付かず熟睡してたご様子、とんだ災難である。
僕は、食料をすべてテント内に運んでいた。もしイノシシが現れる方向が逆だったら、もしも寝ているテントをイノシシに襲撃されていたらひとたまりもないな・・・(◎_◎;)
食料、行動食は全てハッチ収納しハッチカバーをつけるようにしたほうがいいのかも。

リーダーは、昨夜の反省会で、ふたたびハナちゃんが任命された。この海域をよく知るナビゲーターにマツオカさん、そして心のオブザーバーにマーさんの二人をサブリーダーに指名。
この日、途中のどこかのポイントで、ウチダ前隊長・ウエムラさん・ツカケンさんの三名と合流する手筈になっている。合流地点への到達時間しだいでは、錦海湾のワッカファームまで届くかもしれない。


ハナちゃんは今日も元気。ジャンヌダルクのごとく、風呂にも入らないオジサンたちを従えて、意気揚々と突き進む。(ハナちゃんも風呂にはいっていないけどwww)

渋川海岸を出て東に進むと、視える風景がそれまでと違ってきた、工場や煙突が増え、海の色も変化してきた。

クレーンや重機の音がよく聴こえるようになった。何よりも明らかに違うのは、風に乗って工業的な「匂い」が伝わってきた。ふと「金曜日の平日」であることを思い出した。

周防大島をスタートから5日間は温暖で風もそう強くなく恵まれた天候だったが、この日の気象予報では、昼に向けて次第に西風が強くなる予報がでている。 まだ朝の時点では、風もなくとても穏やかな海を漕ぎ進む。

胸上の浜で昼休憩。とても暖かくて静かだ。少し不気味に感じる。
見上げると、上空は暗雲が西から東へと足早に流れている・・・いつ海上を吹き始めるのだろうか。

玉野市と瀬戸内市の間の「岡山水道」に差し掛かると、また海が変わった。
海水温が下がった感じがした。川から流れてきた水が海に流れ込んできているせいだろう。

まだ風は吹かない。ゆるい向かい潮の中漕いでいく。
冬の西風は、一気に強風になることがままある。

視覚、聴覚、肌、髪の毛まで、感覚が研ぎ澄まされていく・・・

空気が冷たくなっていくの感じた。いよいよ西風が吹く・・・
ムラカミ副隊長のカヤックのフラッグが、バタバタとはためき始めて、海面がザワつく、そして追い風に押されてスピードが徐々にUPしていく。おぉ楽チン(≧▽≦)

岡山水道をセオリー通りに岸沿いに通過した、それにより久々井の岬あたりは少し南下しなくてはならなくなった。崖沿いを右から風を受けながら進む。反射波でチョッピ―な波が立つ。後方から視てフォーメーションが狭く左列が窮屈そうだ、イヤな感じ・・・アウターのジッパーを上まで閉めて、スケッグを引っ込めた。
大外から「崖から離れろ~カヤック同士の距離をとれ!!」とハラ隊長の指示が飛ぶ。

宝伝港の横の浜でトイレ休憩をとった。上陸しないで海上で待つ者も気をつけていないとどんどん風に流される。ウチダ前隊長とムラカミ副隊長が連絡を取っていた、この先の西脇海水浴場で我々を待ち構えている。

再出発してすぐ、小さな宝伝港の堤防沿いを進みながらフォーメーションを整え・・!?
堤防ごしのすぐ隣をアンテナが動いてる「ストーップ!!フェリーが出るぞ!!!」と叫んだ。先頭はもう港の出口に差し掛かっている。ハラ隊長が「右に寄れ!右に寄れ!!」と激を飛ばす!
高速艇の方が、ちゃんと視て、止まってくれた。ちょっとドキドキした。(^_^;)


西脇海水浴場前 でウチダ前隊長とウエムラさんとツカケンさんと無事に合流し横断隊は19名になった。隊士達も久しぶりの再会にテンションがあがってる。(^_^)
このとき14:00をまわっていた。錦海湾のワッカファームまでは少し距離がある。この日の目的地を4㎞先の牛窓の前島に設定した。途中離脱したユージさんも陸路とフェリーで前島に渡りキャンプに合流するらしい。「夜の横断隊長」復活だ!!(≧▽≦)

西脇海水浴場を出発して2㎞ほど。左斜め後方から風速8m/s(瞬間最大10m/s)くらい吹いていただろうか、向い潮とぶつかって、ちょっとラフな海況になっていた。フォーメーションのやや風上のポジションをキープしていた。

後方に目をやっていた。「あ、沈した。」ムラカミ副隊長の声がした。(゜o゜)!!
見渡すと右前方のニシハラさんの向こう側にカヤックの白いハルが視えた。イノウエさんだ。追い波に乗って一気に距離をつめ、沈したカヤックのバウを掴んだ。水温も高いし井上さんも元気そうだ。

・・・3日目の船折瀬戸の際、マーさんとの打ち合わせで、もし沈しても、キャンプ用品満載のカヤックは持ち上げて排水は無理だろう。狭い船折瀬戸は幅が50mくらいだから、岸までトーイングしよう。と話していた・・・

しかしこの位置から近くの小島まで数百メートルは離れていた、トーイングにはちょっと遠い。TXレスキューでの排水を試みことにした。荷物満載のイノウエさんの五分割艇はめっちゃ重い!! 

だけど~俺はやってやるぜっ(;゚Д゚)オリャ~!!と自分のカヤックの側面を滑らせるように持ち上げた。
勢いでうっかり自分パドルを流してしまった。片手を伸ばせば拾えたかもしれないが、ラフな海況でつかんだカヤックを放したくなかったので、そばにいたタクローさんに拾ってもらった。

ヤックを横に倒そうとするが、重くてこれ以上ひっくり返せない。まだ半分ほどしか排水できてない。でも俺は一人で出来るぜ(≧▽≦)ウリャ~!!


マーさんが反対側にすばやく寄せてきて、つぶらな瞳で僕を見据えて言った「コータくん!(◎_◎)やめなさい。カヤック傷むから」
ハイ、モウシマセン(・_・;)
イノウエさんが再乗艇しても、まだまだコックピット内には大量の水があった。マーさんと僕とで挟み、ダイスケさんも加わり4艇でイカダを組んで、3本のビルジポンプで全力で排水した。懐かしの「ファイト一発~!!」みたいだった。

※レスキューシーンの画像がないのは、一番いいアングルから観ていたムラカミ副隊長が撮影を怠ったからです(笑)元テレビマンなのに「え~だって、ちょっと撮影する雰囲気じゃなかったから。(^_^;)」と言い訳してました。ww

レスキューに係わった5,6人を除いて、本隊は前島の2㎞手前の「黒島」のビーナスロード辺りで、まとまって待機していた。我々が合流すると、ハラ隊長の判断で、黒島で緊急着陸。前島に渡る事を断念し、ここを今宵のキャンプ地とする事になった。

かなりの強風でテントを張るのも一苦労。びしょ濡れになったウェアもライジャケも干したいが、飛んでいきそうだ。気温もだんだん下がってきていた。

この日の夜は、風でゴーゴーと燃える焚火を囲い、各々の課題や議論が尽きない長い長い反省会になりました。
もし、グループじゃなくて二人のキャンプツーリング中の沈だったら、排水はどの方法がいいだろうか・・・
ウチダ前隊長も、西脇からたった2キロほどツーリングでしたが、その間でもモノ申したいことが多々おありで、強風の中の炎のごとく吠えまくっておられました。(>_<)

とりあえず、ゴールの赤穂まで約30㎞のところまで着ました。残すは最終日のみです。


・・・・あ、ユージさん忘れていた。(゚д゚)!

六日目 渋川海岸~黒島 35.7Km

※specialThanks 今回もまた×5マーさんハルさんムラカミ副隊長の画像を使わせてもらいました。ありがとうございます。


瀬戸内海を渉る(十八次 瀬戸内カヤック横断隊 備忘録)その7 へと続く。

この記事をフォローして♪

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA